「全部入りHDVカメラ」HDR-HC3で遊ぶ

ボーナスでHDR-HC3を買った。 このビデオカメラはいわゆる「全部入り」である。 10万と強の価格であんな機能こんな機能が盛りだくさんなのだ。 ナイトショット機能も今回初めて目にした。

その中でも他のカメラと一線を画す機能が「なめらかスロー録画」と 呼ばれている機能。毎秒240フィールドの高速録画を行うことで、 時間的解像度を高めた撮影が可能になる。 サンプルは検索したらいろいろ出てくると思うので、より詳細には他のサイトを 見られたいが、ここでは3つだけ例を載せる。







1万回転で有名なセミスケルトンハードディスクWestern Digital "Raptor X" と、 何年か前に限定発売されたフルスケルトンハードディスクBUFFALO "DIL-SKL" (上図)のランダムアクセスの様子。 ちなみに Raptor X (WD1500AHFD) はいろいろ曰く付のHDDであるが、 世のブログを見ると仕上がり云々で評判を落としている感じを受けるが そういう方は実際に手にとっていただきたい。かなり威厳とオーラの出ている「ごつい」HDDである。

普通に撮影したもの

なめらかスロー録画したもの








次は、にピアノの早弾きをしてもらい、それを撮影したものである。

普通に撮影

なめらかスロー録画。







最後は、冷えた缶ビールをよく振り、カメラの前で開けた様子である。 撮影は辺り一面にビールが飛び散り、体にカメラにビールがかかり、 酒臭くなった。

冷えた缶ビールをよく振って開け、普通に撮影

冷えた缶ビールをよく振って開け、なめらかスロー録画し、さらに1/4 のフレームレートで再生。







さて、「普通がキライ」な私はこの毎秒240フィールドという機能を別の視点から使ってみたいと思う。 私のPCのモニタは時代に逆行してCRT(FlexScan T962) であるので、垂直同期周波数をほぼ任意に設定することができる。たとえば240Hzに 設定できれば、毎秒240フィールドの動画を「そのまま」具現化することができる。 しかし画面のプロパティをいじる限り、150Hz程度が限界のようであるので 今回は仕方ないので半分の120Hzで実験することにする。

なんでこういうことを考えたかというと、世の中、NTSC→ハイビジョン→ スーパーハイビジョン、またはデジカメの画素数など、空間方向の解像度は 年々上がっているのに、時間方向の解像度は昔からずっと毎秒60回のままである。 これには理由があって、「人間の視覚は毎秒40回程度以上をみわけられないから 毎秒60枚あれば十分」なのだそうだ。しかし自分は仕事のこともあってフレームレートに 敏感だ。毎秒30枚の動画などはもはや見るに耐えない。一般人は毎秒60枚で十分 なのかもしれないが、敏感な自分はもっと上を目指したい。

そこで、なめらかスロー録画機能で撮影した240iの動画を編集して120pにしてみた。 安直に大きさを縮小すれば縞々の無い120pになるので簡単だ。 これをメディアプレーヤーなどで再生すれば良いが、本当に再生できているかの 確認が必要だ。そのために、CRTで再生している様子を再度毎秒240回のなめらか スロー録画機能で撮影して、2コマで1回画面が更新されていることを確認すればよい。 以下に、その様子を示す。

A:まず、撮影対象の、単純な動画。カメラの前で黒い棒を左右に振っているだけ。 60iで撮影し、60pに変換。

B:つぎに、同じ様子をなめらかスロー録画機能で撮影したもの。 240iで撮影し、120pに変換。

C:上の2つのファイルをメディアプレーヤーで表示し、その様子をなめらかスロー録画機能で撮影したもの。 240iで撮影し、240pに変換後、30pでスロー再生(実質1/8倍速)。前半がB、後半がA。

上の三番目の動画の一部を以下に並べる。1枚が1/240秒である。

















A(60p)のファイルを
1/240秒単位で観察
B(120p)のファイルを
1/240秒単位で観察
まず特徴的なのは、上はリフレッシュレート120HzのCRTで表示しているため、 1/240秒の撮影では2コマで1回画面が暗くなっているのがわかる。 また、左の画像は4コマで1回棒が移動しているのに対し、右の画像は2コマで 1回棒が移動している。よくわからない方はタスクマネージャなどを表示して ウィンドウの横端を定規のようにして見比べて頂きたい。

上から言えることは、メディアプレーヤーで、きちんと毎秒120回の動画が 再生できているということだ。しかし上のAとBを見比べてみるとわかるように BよりAのほうが自然な感じがする。棒の中の白い穴に注目してみると、 Aはなめらかに左右に振れているのにBは雪だるまが横に繋がる如くカクカク感が 残っている。この違いは、コマに分解して詳細に検討するとわかるが、ビデオカメラの 露出に原因があると思われる。Aは標準の撮影であり、1コマが1/60秒の露光に 対応しているが、同様にBは本来なら1/240秒の露光に対応すべきなのに、それ以下になっている 気がする。つまり「モーションブラーの不十分なCG動画状態」になっているのだ。

これが不自然さの原因なのかどうかを確認すべく、HC3による撮影ではなく、人工的なCGを 使って調べてみる。まず、モーションブラーが正しいフレームレート120の動画(●)と 正しくない120の動画(■)を作る。そしてモーションブラーの正しいフレームレート60の動画も作る(★)。 調査が目的なので、ネタとしては黒い円が移動するだけのシンプルなものとした。 印のついているのが実験対象の動画であるが、ついでに他のパターンのも作ってみた。

モーションブラーの正確なフレームレート240の動画

モーションブラーの正確なフレームレート120の動画

モーションブラーの正確なフレームレート85の動画

モーションブラーの正確なフレームレート60の動画

モーションブラーの正確なフレームレート30の動画

モーションブラーの正確なフレームレート15の動画

モーションブラー無しのフレームレート240の動画

モーションブラー無しのフレームレート120の動画

モーションブラー無しのフレームレート85の動画

モーションブラー無しのフレームレート60の動画

モーションブラー無しのフレームレート30の動画

モーションブラー無しのフレームレート15の動画

●と★が自然に見え■に違和感を感じることを確認しようとしたのだが、 期待に反して私のリフレッシュレート120のCRTで見る限りは●>■>★の順に自然に見える。 どうも自然画とCGにおいては事情が違うようである。 自然画の動画ではリフレッシュレートより露出が重要で、CGでは露出より フレームレートのほうが重要なのかもしれない。 実際、テレビの画像は冒頭で述べたように60を越えることはなく、それで十分なのかもしれない。 ただCGにおいては■>★という結果より、リフレッシュレートは高いほうが良い。

では自然画とCGの違いはどこにあるのだろうか?それは空間解像度である。 自然画は通常のテレビ(NTSC)で720x480の解像度があるが、 これをフルに使う自然の映像などほとんど無い。あったらぜひ見てみたいものだ。 しかしCGは、エッジがくっきりしていたり、極端な場合は太さ1の線画もある。 そのような場合は高リフレッシュレートは意味があるということになる。 また、NTSCの720x480とHDVの1440x1080との相対的な関係にも意味がある。 店頭でHDVの放送を見ると、NTSCに比べてHDVは相対的にカクカク感がする。 これはおそらくリフレッシュレートがNTSCと同じ60だからだと思う。 同じ画角で考えるとHDVのほうがNTSCより解像度が高く「CG化」しているため、 より高いリフレッシュレートが求められているのだと思う。 概念的に言えば、この現象は俗に「不気味の谷」などと呼ばれる。 潜在的表現力が高まったぶん、それを中途半端に表現すると、見るほうからすれば かえって「不気味」に見えるのだ。

話が少し横道にそれたが、以上のことから、HDR-HC3のなめらかスロー撮影機能で撮った 時間的高解像度の映像は、空間的解像度が著しく低い分、120Hzで見ても意味がないと 結論できる。メーカーの思惑どおり、あくまで「なめらかスロー再生」することに 意味があるのだ。


左:通常録画の1コマ、右:なめらかスロー録画の1コマ

ちなみに画素数の落ち込みは上のリンク先のオリジナルサイズで見ていただくと一目瞭然だが、 自作の画素数カウントプログラムで計測すると、 オリジナルの動画はだいたい60万画素であるのに対し、 なめらかスロー撮影機能で撮ったものはわずか5万画素程度である。

では空間解像度の高い画像で時間的解像度も高められないだろうか? 通常の動画から時間移動的にフレームを補間することを考えてみる。 この手の作業は専用ソフトが10万円くらいで売られているが、 そんな高いソフトを買わなくとも(作業時間とクォリティに目をつむれば) VCで簡単に補間できる。

上のサンプルはHDVではなく普通のDVであるが、移動する映像の補間結果が わかりやすいので先代のMyCELICAを例として使った。左が補間前、右が補間後。 この例ではわかりやすくするために1/10倍速の超スロー再生で補間している。(ちなみにドライバーは本人っす)。

このような補間を行うことで、画像の空間解像度を保ったまま、時間的解像度も高 い再生を行うことが可能のはずである。その試みは。。。現在鋭意続行中。

その逆の、「超早回し」もあったりする。明石海峡大橋を時速80キロで渡るのを10倍速で表示。つまり時速800キロ!!!

こちらは100倍速。大阪から東京を時速80000キロで走り抜ける!!!